米澤所長が瑞宝中綬章を受章 The Order of the Sacred Treasure, Gold Rays with Neck Ribbon will be awarded to Dr. Akinori Yonezawa
2020.11.03
2020.11.03
令和二年秋の叙勲において、米澤明憲所長が瑞宝中綬章を受章することになりました。瑞宝章は、国家又は公共に対し功労のある方のうち、公務等に長年にわたり従事し成績を挙げた方、またその長年にわたる従事に継続して、あるいは関連して顕著な功績を挙げた方に授与される勲章です。今回の受章は米澤所長の長年にわたる教育・研究への貢献と功績が評価されたものです。なお受章のお祝いの会等につきましては、昨今の情勢や、ご参加の皆様およびそのご家族・ご関係の方々の安全と健康を鑑み、当面開催を見合わせます。
米澤所長は、情報学 (コンピュータ科学) の分野において「並列オブジェクト指向計算モデル」の考案・確立に代表される先駆的な理論および実践研究で世界的な業績を挙げました。並列オブジェクト指向計算モデルは、多数のコンピュータがネットワークで互いに接続された「並列計算環境」におけるプログラムの振舞いを扱う計算モデルで、「オブジェクト」と呼ばれるソフトウェア部品のひとつひとつに「スレッド」と呼ばれる小さなコンピュータ様のものを埋め込んだ「並列オブジェクト」という概念を導入するという着想にもとづいています。
今日、インターネットに代表される超大規模並列分散計算システムや、スーパーコンピュータ・クラウド計算システムに代表される超高性能大規模並列計算システムなど、ほとんどあらゆるコンピュータシステムは何らかの並列計算環境として実現されていますが、米澤所長が並列オブジェクト指向計算モデルの考案に至ったのは今から 40 年以上前、すなわち今日のようにコンピュータが社会に広く普及・浸透する遥か前のことであり、遠い将来を的確に予見した極めて先駆的かつ画期的な研究と言えます。また米澤所長は理論的研究にとどまらず、並列オブジェクト指向計算モデルにもとづくプログラミング言語の設計やその実装・応用などの実践的研究においても優れた成果を挙げており、理論・実践の両面において世界的に卓越した業績を挙げています。
この並列オブジェクトの考え方は、今日では並列計算機におけるプログラム開発手法の礎の1つとなっており、特に、大量の計算処理要求を多数のコンピュータで高速かつ効率よく処理する必要があるときには、採用が必ず検討される技術の 1 つとなっています。例えば Twitter や Facebook のメッセージ機能など、大量の利用者からのメッセージを素早く処理しなければならないようなサービスでは、その設計や実装 (もしくはその一部) に並列オブジェクトの考え方が応用されています。また米国イリノイ大学で開発された大規模分子動力学シミュレータ NAMD は、並列オブジェクト指向システム Charm++ を用いて開発されており、2009年の新型インフルエンザウイルス (A(H1N1)pdm09) や、2020年現在世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス (SARS-COV-2) のスーパーコンピュータ上での解析に広く用いられるなど、ウイルスとの戦いにも間接的に貢献しています。
また米澤所長は、2011年から2016年まで理化学研究所計算科学研究機構 (現・計算科学研究センター) の副機構長をつとめ、スーパーコンピュータ「京」の運用やスーパーコンピュータ「富岳」の開発・整備の方針の策定に貢献するなど、我が国のスーパーコンピュータ開発の発展にも大きく貢献しました。
人材育成の面でも米澤所長は大きな功績を挙げています。1983年に東京工業大学理学部情報科学科の助教授に赴任以来、東京大学理学部情報科学科教授、同大学院理学系研究科情報科学専攻(のちに同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻)教授を歴任し、指導教員として情報学分野で 32 名の課程博士学位取得者を輩出しました (この中にはフランス人 6 名、カナダ人 1 名、中国人 1 名が含まれます)。これらの博士号取得者の多くは、現在、東京大学、京都大学、名古屋大学、東京工業大学、お茶の水大学、東北大学の教授・准教授等として情報学(コンピュータ科学)分野の教育・研究に活躍しています。
(その他 各種公職等多数歴任)
(その他 各種学会・論文誌論文賞等多数受賞)